読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

カレーという深宇宙を知ることはNASAですら簡単なことではない

男の朝は早い。

カーテンの隙間から入る薄明りで目が覚める。

見た目からは想像がつかないほど敏感なのだ。

まだ肌寒い空気の中、ゾンビのように布団から這い出て、カーテンをしっかりと締めてまた寝るというタイムループ・ワークの世界でもう何年もとらわれている。

 

解決策は夜、カーテンに隙間がないことをチェックすることだ。

敏感で繊細でありながらも鈍感で無頓着な男は今夜もそのことを忘れて静かに眠るだろう。

 

人生とはそういうものだ。

 

二度寝こそがこの世界の最高の幸せであることはおよそ世界中の人が知る周知の事実だ。『二度寝教』なるものを作れば、男は瞬く間に神になれるかもしれない。だが、すぐに金に溺れて捕まることが予想されているので男は夢の中だけで楽しむのだった。

 

それでも朝は男を二度目の目覚めへと導き、ふらついた足取りでキッチンへと向かわせるのだった。

男の朝食は決まっている。

豆乳バナナ青汁と納豆。今ならもれなくおばさんが小さい時から僕のためだけに作ってくれるサータアンダギーがもれなくついてくる。砂糖を使わずとも甘味を表現し、外はサックリ中はシットリの口当たりは30代の胃には優しい。

作り方?

聞いた事がない。いや、聞く必要がないの間違いだ。

例え同じ材料でも同じ味は出せないだろう。それはその手だからこそ醸し出せる味なのだから。知らない方が幸せな事もあるのだ。

男は基本、立ちながら朝食を食べる。 カウンターキッチンの前に広がる大きな窓から朝日を感じ、目の前の広大な田端にゆとりを見出しながら食べる朝食に意味があると考えているからだ。座っていてはこれを感じることができないのだ。

 

が、しかし、男の朝の10分の幸せを飲み込もうとする不穏なブラックホールが朝の光を飲み込み始めていた。

気が付いたときにはもう遅かった、、、男が目を向けたブラックホールの中心部分。

専門用語でいうと『特異点』にあったのは父が昨夜作ったカレーであった。

 

父はカレーという深宇宙に過去3回ほど男の監督下のもとに調査に出かけたことがあるが、今回は司令官の指示を待たずに一人で興味の赴くままに一人で小型艇に乗り込み、

深宇宙の本当の恐ろしさも知らずに無謀な旅に出てしまったのだ。

 

おかげで突如として現れたブラックホールに飲み込まれ、時間流は平行時間より低流し、ルーは水のように淀み、散りばめられた具材は旨味を失い、捕らわれて動けずにいた。

我らカレー世界における深宇宙調査部隊(CURRY SPACE INVESTIGATER)

通称:C.S.Iに配属されたルーキーパイロットにおいてはよくあることだ。

 

男はとっくに部隊を2階級特進で名誉退任し、悠々自適な朝を過ごしていたに、、、、母提督の緊急要請によって、緊急招集がかけられた、、、、、残りの人生は妻と子供たちとの暮らしに安息の日々を求めようとしたが残念ながらいないので、

オブザーバーということならとミッションを承諾した。

 

ギャラクシースパイス艦長の指揮下のもと対深カレー多目的救助戦略艦バーモント号は

地球時間ヒトマルマルマル時にカレーステーションを離陸。最高巡航速度マッハ9.8で目的地へと向かった。

『こんな簡単なミッション、あんたの出番はありませんよ、オブザーバー男さん!』艦長はそう言い放ち、副艦長のBP・ウコン中佐に指揮を任せ、自分は自室へと消えた。

どうやら男は歓迎されていないようだ。

 

しかし、男は父隊員が辿った戦略調理工程に目を通していた。

オニオン、ポテト、キャロット、チキン星団をフライパン炒め工程なしの急激なウォーター・スローイン・ドライブというエンジンを労わらないスピードを重視した走り。

 

しかも、父隊員の小型艇では耐え切れないであろう水分比率が多いキャベツ星団を通り抜けたおかげで起こってしまった水気の増加。

 

さらにいうと、カレー連合艦隊がまだ実験段階で上級士官しかその使用を許可されていないエンジン・ルー『超微細粒子フレーク型エンジン・ルー』を使った形跡がある。

通常艦艇には『固形型可割式エンジン・ルー』を搭載しているのだが、、、、

超微細粒子フレーク型エンジン・ルーは水分量の調整や粒子スパイスのコクの調整が

難しく事故起こしやすので先日も主要10か国エンジン・ルー会議『SPYCE10』においても凍結が承認されたばかりだった。

『お前にはまだ早い、、』男は父隊員の軽率な行動に腹を立て、力いっぱいの拳で壁を殴った。

 

グツグツグツグツ、、、独特の音と共に艦が振動しだした。

どうやら到着したようだ。

『か、、艦長!!』ウコン中佐がひきつった顔で自室にいるスパイス艦長を呼び出した。

ブリッジに来た艦長もまた声を失った、、『こ、これは、、』

 

無理もない、、予想はしていたが、、まさかここまでとわ。

 

シャバシャバになったダークマタールー

キャベツ星団を突っ込み過ぎたコクなきキャベツ臭

それに付け加えて、超微細粒子エンジン・ルーの副作用による水分バランスの低下に

よる水臭さ。

ん???あの淀みは、、、、ま、まさか、、、この状況を脱するために父隊員は

ソイ・ソースキャノンを使ったのか?馬鹿な!この状況であれは使えば火に油を注ぐだけ、、、、

 

『艦長!指示を!』ウコン中佐はキャリア組の初ミッション。考えもせずマニュアル通りの流れか、、、焦るのも無理はない。しかし、この状況では誰もがそうか。

『ムムムム。しかし、これは我らカレー艦隊の管轄ではないぞ。すでにこのシャバ状態を考えればスープ特務機関の管轄だろう、、、』艦長がその判断を下すのもこの状況ならうなずける。

むしろ、スープ特務機関に任せてスープとして処理する方がはるかに楽だろう。

しかし、今から地球を経っても超沸騰爆発までは間に合わないだろう。

さあ、どうする。

 

『仕方ない!時間がない!カタクリーヌ魚雷装填!』

 

やめろ~!男は叫んだ!しかし、遅かった、、、すでに発射の合図とともに戦略士官は発射ボタンを押していた。しかし、カタクリーヌ魚雷はコースをずれ爆発、艦にも甚大な被害が出た。指令室も爆発、、、、、、

男が次に目を覚ました時、状況は壊滅的だった、、、、送電線などが断線し、あちこちで火花をちらしていた。

ど、どうなったのだ、、、、男は叫んだ、『被害報告!』

『第二~第七デッキまで甚大的破損、クルー死傷者多数、、そして、、、、』

 

『なんだ?』男はウコン中佐に言い放った。

 

『艦長、、、死亡です』ウコン中佐は静かに答えた。

 

男は無言で返した。

事態は切迫している。次の階級で考えるとウコン中佐が艦長だが、この状況を彼が指揮するのは無理だろう。

もうあの作戦しかないか、、、男は腹を決めた。

『ウコン中佐!ウコン中佐、しっかりしろ!今から最後のかけに出る』

男は失ったクルー達がいない指令室を走り回り機材の調整をした。

 

『もうダメですよ、男オブザーバー。僕らはこのまま死ぬんですよ』中佐はもう戦意を喪失していた。

 

『バカ野郎!!!』男オブザーバーは中佐の胸ぐらをつかみ力いっぱい殴った。

『お前はカレー特務アカデミーで超辛×300倍LEEコースで3年の日々に耐えたのだろう!!甘口ったれるな!!星の王子様の時間は終わりだ!おれ達で成功させるんだよ、このミッションを』男の熱いまなざしに中佐の心は落ち着いた。

 

『了解しました。男、、、艦長、、指示を』

 

『わかった。第二から第七デッキを放棄。生き残ったクルーは第一デッキへ移動。

まだ戦えるクルーは指令室と武器庫に配置せよ。5分で全移動を終了後、切り離したデッキは自動爆破。警戒警報ルー発令!』

けたたましい警戒警報音とイエローライトが艦内をひしめく中、全移動は完了し、第二から第七までを切り離し、命令通り自爆させた。

『艦長、完了しました』

先ほどの意気消沈もどこへやら。今は立派な目になった中佐がそこにいた。

 

『よし、それではいくか!中佐!まずは別フライパンで用意型バター炒め使用の疑似星団チキン爆弾発射!!!続いて、オイスターソース魚雷を2文装填、発射!!さらにさらに、トウバンジャンレーザーを5分照射しろ』

 

『す、すごい!!艦長、ルー数値が深みコク値に戻りつつあります。し、しかし、ダメです、ウォーター数値が一向に改善されません』中佐が叫んだ。

 

『仕方ない、、、中佐、前クルーを連れて脱出しろ!』男

『い、いやです!バカ言わないでください。自分も艦長と一緒に』中佐

『だまれ、これは命令だ!、、、、走れ、もう時間がない。いいか、この世にはまだ未知なるカレー銀河がたくさんある。君たち若いやつらが見つけてくれ。短い時間だったがありがとう』

男はオタマを頭にあて、連合の敬礼をした。中佐も涙を流しながらオタマで返すと、走って小鍋型緊急離脱艇に急いだ。

 

男は顔色を変えた

『コンピューター、緊急離脱艇が離脱と同時に緊急プロトコル・アルファ爆破指令を30秒後に実行。軌道を5度修正して、爆発後の艦の素材であるレンコンスターチオロシとポテトオロシを同時にカレー内部に投下し、トロミ度を正常値に戻す』

 

男は艦を犠牲にしてとろみをつける気だった。

 

『緊急爆破シークエンス開始。クルーは全員退避してください!15、14、13、

12、、、、、、、、』コンピューターのアナウンスが静かに続いた

 

『さよなら愛しきカレーよ』男艦長代理がつぶやくと同時に艦は爆発した。

 

『艦長~』脱出艇から中佐は事の全てを目にした。

 

男の最前の判断により、カレースペースは正常化した。

中佐は味見スプーンナイザーでカレースペースの一部を採取した。

 

取り出したカレーを口に含んだ。

 

『うまい、、、ありがとう男艦長。最高のカレースペースです』

中佐の涙というスパイスがさらに味に深みを与えたことは言うまでもない。

 

忘れるな、カレースペースは工程と素材に合わせた下ごしらえが決め手だ。

そして、失敗しても最後までおいしさの追求をあきらめるな!

中佐は一口の中に男艦長のそんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 

と、まあ、男は壮大なカレースペースを旅しながらカレーをリメイクし朝から一仕事終えるのでした。

f:id:MONCHI:20170204190608j:plain